カメラ指示
別名:ANGLE ON、CLOSE ON、カメラアングル
カメラが何を映すか、どう動くかを読み手に伝える行です。ANGLE ON、CLOSE ON、BACK TO SCENE など。スペック脚本ではめったに使わず、物語が観客に特定の1つのものを見せることにかかっている瞬間のためにとっておきます。
ページ上では
カメラ指示
CLOSE ON 2枚目の皿
実践では
カメラ指示とは、カメラが何を映すか、あるいはどう動くかを読み手に伝える脚本の行です。ANGLE ON、CLOSE ON、WIDE ON、PUSH IN、PAN、TRACKING、BACK TO SCENE などがあります。短いシーン見出しのように、独立した1行として大文字で書かれ、動作ではなくショットを描写します。
スペック脚本では、めったに使わないようにしましょう。ショットを選ぶのは監督の仕事であり、ページをめくるたびにカメラ指示に出会う読み手は、脚本家が物語を越えて他人の仕事にまで手を伸ばしていると感じます。ほとんどの読み手は、同じ効果をト書きで出してもらうほうを好みます。1つの細部だけを切り出した短い段落は、そう書かなくてもクローズアップとして読めるのです。
それでも、カメラ指示には居場所があります。手がかり、種明かし、画面の外から伸びてくる手など、シーンのままでは隠れてしまう何かに観客が気づかなければならないとき、うまく置かれた CLOSE ON が1つあれば、何を見るべきかを読み手に正確に伝えられます。そして映画が準備段階に入れば、撮影台本と監督のショットリストがカメラを完全に引き継ぎます。だからこそ、スペック脚本はカメラをそちらに任せておけるのです。
居場所を勝ち取ったカメラ指示
INT. キッチン - 夜
エレン(60代)がテーブルに皿を2枚並べる。引かれている椅子は1脚だけだ。
CLOSE ON 2枚目の皿
その真ん中に、結婚指輪が1つ置かれている。
BACK TO SCENE
エレンは腰を下ろし、フォークを取って、そこに何もないかのように食べる。
このクローズアップこそがシーンです。これがなければ読み手は指輪に気づかないかもしれず、物語はその指輪を軸に回っています。それでも同じショットは、カメラ指示を使わずに、独立したト書きとして書くこともできます。「2枚目の皿の上に、結婚指輪。」こちらの書き方を好む読み手も多いのです。ト書きだけでは読み手が立ち止まって見てくれないときに、カメラ指示を使いましょう。
よく使われるカメラ指示とその意味
ANGLE ON は、今のシーンの中の人や物にカメラを向けます。CLOSE ON または CLOSE UP は、顔、手、物などの細部を切り出します。WIDE ON や WIDE SHOT は空間全体を見せます。BACK TO SCENE は、寄りのショットやインサートの後で、広い画に戻ります。POV は登場人物の目を通してシーンを見せ、INSERT は手紙や画面など、観客が読み取らなければならない細部へ切り替えます。
動きには動きの語彙があります。PUSH IN や DOLLY IN は近づき、PULL BACK は遠ざかり、PAN はカメラをシーンの端から端へと振り、TRACKING は動く被写体を追い、AERIAL や OVERHEAD は上から見下ろします。どれも大文字で、たいていは独立した1行に書き、描写の前にコロンやダッシュを置いて区切る脚本家も多くいます。脚本ソフトはこれらをショットとして書式設定するので、脚本全体で表記がそろいます。
スペック脚本がカメラ指示を避ける理由
スペック脚本は撮るためではなく、読まれるために書かれます。最初の観客は、リーダー、プロデューサー、俳優であり、カメラ指示はその人たちにとって用のない技術的なメモで読む流れを中断させます。また、脚本家が監督を信頼していないことをほのめかしもします。その監督がプロデューサーの取りつけたい相手であれば、これは不利な第一印象です。
実際的な理由もあります。カメラ指示はもろいのです。カメラ指示が描くのはシーンの撮り方の1つにすぎず、監督、撮影監督、ロケーションのどれもがそれを変えてしまう可能性があります。ト書きに書き込まれた物語のビートはどの撮り方にも生き残りますが、脚本に書き込まれた PUSH IN はたいてい無視されます。読み手はそれを知っているので、カメラの言葉が多い脚本は素人の原稿に見えるのです。
カメラ指示を使わずにページ上で演出する
プロの代わりのやり方は、ト書きの書き方によってショットを暗示することです。新しい段落は新しいショットを示唆します。1つの細部だけを挙げた1行の段落は、クローズアップとして読めます。最初に見えるものから書き始め、その後ろにあるものへ進めば、フレームが決まります。読み手は一度もその言葉を読まずに、頭の中にカメラを組み立てるのです。
注意を導くために「〜が見える」「〜が聞こえる」といった書き方をする脚本家もいます。よく使われ、一般に受け入れられていますが、言葉が増えるので、直接の描写を好む読み手も多くいます。基準はどのカメラ指示とも同じです。観客が見るのと同じように読み手にその瞬間を見せる書き方を、それができるいちばん少ない言葉で書きましょう。
脚本にカメラ指示を入れるべきとき
物語が、観客に何か特定のものを見せることにかかっていて、ト書きだけでは読み手が目を向けないときに使いましょう。探偵が見逃す手がかり、テーブルの下の銃、群衆の中の顔。こうした瞬間には、CLOSE ON や ANGLE ON が、そのショットはスタイルの選択ではなく物語の一部なのだと読み手に伝えます。
自分で映画を監督する場合や、映画のグリーンライトが出た後に撮影台本を書く場合には、もっと具体的に書いてかまいません。そのとき脚本は製作のための文書として働くからです。それでも、多くの監督はショットリストを別に用意します。スペック脚本の良い目安は、原稿全体でカメラ指示はほんの数個までにし、そのどれもがシーンに欠かせない仕事をしていることです。
よくある質問
脚本のカメラ指示とは何ですか?
カメラが何を映すか、どう動くかを読み手に伝える行です。ANGLE ON、CLOSE ON、WIDE ON、PUSH IN、BACK TO SCENE などで、ト書きの段落のあいだに独立した1行として大文字で書きます。
スペック脚本でカメラ指示を使うべきですか?
控えめにしましょう。ショットを選ぶのは監督の仕事で、ほとんどの読み手はショットを暗示するト書きを好みます。カメラ指示は、物語が観客に特定の1つのものを見せることにかかっている場面だけに残しましょう。
脚本の ANGLE ON とはどういう意味ですか?
場所を変えずに、シーンの中の特定の人や物にカメラを向けるという意味です。シーンの中で読み手の注意を移すいちばん一般的な方法であり、いちばん使いすぎやすい方法でもあります。
脚本の CLOSE ON とはどういう意味ですか?
顔、手、物などの細部をクローズアップで映し、観客に気づかせるよう求める指示です。その細部が物語にとって重要で、ト書きだけでは読み手が立ち止まらないかもしれないときに使いましょう。
BACK TO SCENE とはどういう意味ですか?
クローズアップ、インサート、POV のショットの後で、読み手をシーンの広い画に戻す指示です。カメラがもうその細部を映していないことがはっきりします。
CLOSE ON と書かずにクローズアップを示すにはどうすればよいですか?
その細部に独立した短いト書きの段落を与え、読み手にそれしか見えないように書きます。「2枚目の皿の上に、結婚指輪。」新しい段落は新しいショットとして読まれます。
「〜が見える」はカメラ指示ですか?
正式にはそうではありませんが、同じ働きをします。読み手の目を導くのです。広く受け入れられていますが、短くて直接的なので、直接の描写を好む読み手も多くいます。
映画のショットは誰が決めるのですか?
監督です。たいていは撮影監督とともに、準備段階で作るショットリストや絵コンテの中で決めます。脚本家は何が起き、何が重要かを決め、監督はカメラがそれをどう見せるかを決めます。