観客は知っているのに、登場人物は知らない状態です。その人物のセリフすべてに二重の意味が生まれ、本人が気づくのを待つことが緊張になります。
フランソワ・トリュフォーとの対談で、アルフレッド・ヒッチコックは机の下の爆弾を例にしました。予告なく爆発すれば驚きは十五秒です。観客が先に見て、人物の雑談中に時計を気にすれば十五分のサスペンスになります。同じ場面でも知識が各台詞を変えます。
人物のいない場面で危険や秘密を観客に示し、その知識が重要な場面へ人物を入れます。行動は本人が知る範囲で自然にします。緊張を作るためだけの奇妙な行動ではアイロニーが崩れます。
劇的アイロニーは驚きと引き換えです。同じ事実で予告も衝撃も与えられません。早い開示はサスペンスで報い、意外な転換は隠しておくなど、場面の目的を決めます。
劇的アイロニーは知識の差で、観客が人物の知らないことを知ります。状況的アイロニーは結果の逆転で、人物も観客も予想と反対の結果を迎えます。
その強い源の一つです。恐れる結果を待つのがサスペンスで、人物が知らない情報を与えることで恐れる理由を作ります。
机の下の爆弾、違うポケットの手紙、後部座席の他人など、見える行動で情報を渡します。次の場面は人物の無知から書き、不安は観客に任せます。