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物語の技法

受動態

別名:能動態と受動態

主語が動作をするのではなく受ける文の形。能動態の「サムが窓を割った」ではなく「窓が割られた」とする書き方です。日本語では動詞に「れる・られる」をつけて作ります。

同じミスを二通りに報告する。

受動態
ミスが犯された。
能動態
私が注文を送り忘れました。

実践では

能動態では、文の主語が動作をします。「犬が郵便配達員をかんだ」。受動態(受け身)では、主語が動作を受け、動作をした側は「〜によって」「〜に」の形に回るか、まったく消えます。「郵便配達員は犬にかまれた」、あるいは単に「郵便配達員がかまれた」。どちらの文も同じ出来事を伝えています。変わるのは、文の先頭に誰が立つか、そして読み手が誰の仕業かを知るかどうかです。

日本語の受け身は、動詞に「れる・られる」をつけて作ります。書かれる、建てられる、承認された。日本語には英語にない「迷惑の受け身」もあり、「雨に降られた」「隣の人にピアノを弾かれた」のように、自分が被害を受けた気持ちを表します。英語の受動態(passive voice)は「be動詞+過去分詞」で作ります(The window was broken)。英語圏では、動詞のあとに「by zombies(ゾンビによって)」を足しても意味が通れば受動態、という見分け方がよく知られています。

受動態は文法の誤りではなく、弱い文章や過去形や長い文と同じものでもありません。何を強調するかの選択です。英語の文章読本は能動態を勧めることが多く、短くて責任の所在がはっきりするからですが、古典的な英語の文章指南書『The Elements of Style』でさえ、受動態は「しばしば便利で、ときに必要」だと認めています。動作の主が不明なとき、重要でないとき、あえて伏せたいときなどです。

誰の責任かをめぐる場面の能動態と受動態

責任者が届かなかった荷物について説明する

INT. 倉庫の事務所 - 夜

電話はスピーカーになっている。レナータ(50代)が腕を組んで窓際に立つ。トム(30代)が印刷したメールを読み上げる。

TOM

「いくつかのミスがなされ、ご注文の品は期日までに発送されませんでした」

RENATA

逆から読んで。

TOM

僕が注文を送るのを忘れました。

スピーカーの向こうが長く沈黙する。レナータが腕をほどく。

トムのメールは動作の主を二度隠しています。「ミスがなされ」も「発送されませんでした」も、誰がしたのかを言いません。レナータの求めで、それが主語のある一つの能動文に変わり、その転換が場面の緊張を生みます。ここでの受動態は文体の失敗ではなく人物の選択で、場面はそれを意図して使っています。

能動態と受動態の例

同じことを言う文の組を並べます。能動「委員会が予算を承認した」、受動「予算が委員会によって承認された」。能動「誰かが私の自転車を盗んだ」、受動「私の自転車が盗まれた」。能動「嵐が道路を通行止めにするだろう」、受動「道路は嵐によって通行止めにされるだろう」。時制は変わりません。態と時制は別々の選択です。

受け身には、動作の主を示すものと示さないものがあります。「この小説は村上春樹によって書かれた」は主を示し、「この小説は1987年に書かれた」は示しません。責任をぼかすのは後者で、推敲のときに最初に確かめたいのもこちらです。日本語ではそもそも主語を省くことが多いので、能動文でも誰がしたのかが消えることがあります。

受け身に見えて受け身ではない文もあります。「先生が来られた」の「られる」は尊敬、「この魚は生で食べられる」は可能、「昔が思い出される」は自発です。「ドアが閉まっている」は状態を表し、誰かが閉めたという動作ではありません。主語に対して誰かが何かをしているかどうかを問いましょう。

受動態を使うとよいとき

動作の主が不明なとき(「その絵は1990年に盗まれた」)、わかりきっているとき(「彼女は2008年に選出された」)、誰かに起きたことのほうが重要なとき(「けがをした3人が病院に運ばれた」)に使いましょう。報道、科学論文、法律文書がよく受け身を使うのはこのためです。実験報告が「試料は90度に加熱された」と書くのは、読み手にとって大事なのが試料であって、バーナーを持つ学生ではないからです。

文の頭と終わりに何を置くかを調整するためにも使えます。読み手は既知の情報を前に、新しい情報を後ろに置くことを期待します。「賞は見知らぬ男に贈られた。その男は、のちに彼女の兄だとわかった」は「その男」を主題に保ち、二つの文をつなぎます。

明快さが必要な文章、つまり説明書、フィードバック、謝罪、議論では、責任の所在をぼかす受け身を避けましょう。「遺憾ながら不手際があった」のような言い回しが謝罪会見で批判されやすいのは、誤りを認めながら誰の誤りかを言わないからです。誰が何をしたかを読み手が知る必要があるなら、それを書きましょう。

受動態を能動態に直す方法

動作の主を見つけて主語として先頭に置き、「〜れる・られる」をふつうの動詞に戻します。「報告書はインターンによって書かれた」は「インターンが報告書を書いた」になります。「によって」がない場合は、主を自分で補う必要があります。「その決定は昨日下された」は「取締役会が昨日その決定を下した」になります。

すべての受け身を機械的に直すのはやめましょう。文章チェッカーは受け身を誤りのように指摘しますが、「彼女は札幌で生まれた」のような文に役立つ能動の形はありません。能動のほうが短く、明快で、誰が行動したかに正直なときに直し、大事なものを先に置けているときは残しましょう。

小説と脚本の受動態

小説では、受け身が謎や無力感を生むことがあります。「ドアが開けられた」と書けば、読み手は誰が開けたのかと考えます。ホラーの場面では効果的でも、ふつうの場面では引っかかりになります。受け身で話す人物は、はぐらかしている、堅苦しい、役所的に聞こえることが多く、上のトムのメールのように、一行でその人物について多くを伝えます。

脚本のト書きは、ほぼ必ず能動で現在形で書きます。観客がいま見ているものを描くからです。「マラが引き出しを叩きつけるように閉める」であって、「引き出しがマラによって閉められる」ではありません。動作の主をあえて画面の外に置きたいとき(「明かりが消される」)は受け身も使えますが、受け身だらけのページは読むのが遅く、出来事が誰にも起きていないように感じさせます。

5分でできる態の推敲

最近書いた段落を一つ選び、動作を受ける意味の「〜れる・られる」に線を引きます。それぞれについて、動作をしたのは誰かを書き出しましょう。主を言えないなら、読み手がそれを知る必要があるか考えます。必要なら、その文を能動に書き直しましょう。

次に一度だけ逆をやります。動作を受ける側のほうが動作の主より重要な能動文を選び、受け身にしてみます。段落を声に出して読みましょう。目標は受け身をゼロにすることではなく、どの文も意図して大事なものを先に置いている段落です。

よくある質問

受動態(受け身)とは何ですか?

受動態とは、主語が動作をするのではなく受ける文の形で、「ケーキが食べられた」のような文です。日本語では動詞に「れる・られる」をつけ、英語では「be動詞+過去分詞」で作ります。

能動態とは何ですか?

能動態とは、主語が動作をする文の形で、「サムがケーキを食べた」のような文です。ほとんどの文は能動態で、多くの文章読本も能動を基本にするよう勧めています。

能動態と受動態の違いは何ですか?

能動態では動作をする側が主語です(「料理人がトーストを焦がした」)。受動態では動作を受ける側が主語で、動作の主は「によって」で示されるか省かれます(「トーストが焦がされた」)。

受動態を使うのは間違いですか?

いいえ。受動態は文法的に正しい形です。誰がしたのかを隠したり、理由もなく文を長くしたりするときは悪い選択で、動作の主が不明なときや重要でないときはよい選択です。

受動態はどう見分けますか?

日本語では、動作を受ける意味の「れる・られる」を探します。尊敬、可能、自発の「られる」と区別しましょう。英語ではbe動詞+過去分詞を探し、動詞のあとに「by zombies」を足しても意味が通るか確かめます。

過去形と受動態は同じですか?

違います。時制はいつかを、態は誰が動作するかを表します。「彼女が手紙を書いた」は過去の能動、「手紙は毎年書かれる」は現在の受動です。どの時制にも能動と受動があります。

脚本で受動態を使ってもいいですか?

めったに使いません。ト書きは観客が見るものを現在形で描くので、能動にすると速く明快になります。動作の主をあえて画面の外に置きたいときだけ受け身を使いましょう。