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物語の技法

アンチヒーロー

別名:反英雄、ダークヒーロー

勇気や良識、理想といった典型的な英雄の資質を欠きながらも、物語を背負い、観客の関心を引きつける主人公です。『タクシードライバー』のトラヴィス・ビックル、『ブレイキング・バッド』のウォルター・ホワイト、デッドプールなどがアンチヒーローです。

実践では

アンチヒーローを特徴づけるのは、何を望むかではなく、何が欠けているかです。家族を守る、腐敗した仕組みを暴くといった観客が支持できる目的を追うこともありますが、古典的な英雄なら拒むような身勝手さや冷笑、暴力でそれを追い求めます。目的と手段のあいだの緊張が、観客を物語に引きとめます。

観客がアンチヒーローについていくのは、憧れとは別の理由からです。面白い、有能である、自分の欠点に正直である、あるいは周りの人間より単純に興味深い、といった理由です。周囲にはもっとひどい人物が配置されていることが多く、比べることで、観客はすべての行いを認めなくても彼らを応援できます。

アンチヒーローは文学に長い歴史があります。ドストエフスキーの『地下室の手記』(1864年)の語り手は自らをそう呼んでおり、1960年代後半から70年代のアメリカ映画は、『俺たちに明日はない』から『タクシードライバー』まで、アンチヒーローを映画の中心的な存在にしました。『ザ・ソプラノズ』以降の質の高いテレビドラマは、シリーズ全体をアンチヒーローを軸に組み立ててきました。

間違った理由、正しい結果

アンチヒーローが身勝手な理由で善い行いをするシーン

INT. 質屋 - 昼

無精ひげのデル(50代)がカウンターの奥で札を数えている。十代の少年が震える手で結婚指輪をガラスの上に滑らせる。

デル

母親のか?

少年

母さんは気づかないよ。入院してるから。

デルは指輪を押し返し、札を3枚抜いてその上に置く。少年が顔を上げたときには、デルはもう背を向けていて、どうせその指輪は売れないとつぶやく。

デルは少年を助けますが、その優しさを商売の言い訳で隠し、礼を受け取ろうとしません。行いと態度のこのずれは、アンチヒーローに典型的なものです。観客はデルが認めようとしない良識を目にし、もっと大きなものがかかったとき彼がどうするのかを知りたくなります。

人物をアンチヒーローにするもの

アンチヒーローは物語の主人公です。観客は彼らを通して出来事を体験し、彼らに何が起こるかを見届けたいと思います。違いは、私たちが英雄に期待する資質のどれかが欠けていることです。臆病だったり、残酷だったり、不誠実だったり、怠惰だったり、道徳に無関心だったりしますが、物語はそれを取りつくろいません。

アンチヒーローには、たとえ狭くても何らかの掟があるのが普通です。ハン・ソロは自分の得を優先しますが、『スター・ウォーズ』の最後で仲間を見捨てません。デッドプールは暴力的で下品ですが、その暴力はそれに値する相手に向けられます。この掟があるから観客は期待を持てますし、人物がその一線に近づくのか越えるのかを見守ることもできます。

アンチヒーローには幅があります。一方の端には、酒に頼りがちな気の進まない刑事のように、根は善良だが角のある人物がいます。もう一方の端には、『ブレイキング・バッド』後半のウォルター・ホワイトのように、行いが悪役に近い主人公がいます。人物の位置は物語の中で動くことがあり、その動きそのものが物語の弧になることも少なくありません。

アンチヒーロー、悪役、悪役の主人公

悪役は主人公に立ちはだかる存在で、たいていは物語の敵対者です。アンチヒーローは主人公であり、対立する相手のほうが立派な人物であってもそれは変わりません。違いは物語の中での立ち位置であって、道徳ではありません。アンチヒーローが一部の悪役よりひどいことをしても、物語の中心人物であることに変わりはないのです。

悪役の主人公とアンチヒーローを区別する書き手もいます。悪役の主人公は観客が悪だとわかる目的を追い、物語は共感よりも魅了を誘います。『ナイトクローラー』のルー・ブルームや『アメリカン・サイコ』のパトリック・ベイトマンがこれに当たります。一方、アンチヒーローの目的は、手段には賛同できなくても、観客が共有できるものであることがほとんどです。

これらの呼び名は道具であって、規則ではありません。トニー・ソプラノやマイケル・コルレオーネがアンチヒーローか悪役かについて観客の意見は割れており、その割れ方こそが彼らを長く記憶に残る人物にしています。書くときは、人物が何を望み、そのために何をする気があり、それぞれの選択に観客がどう感じるべきかに集中しましょう。

アンチヒーローの書き方

早い段階で、観客が彼らについていく理由を与えましょう。有能さ、機知、観客が理解できる心の傷、思いがけない良識を見せるひとつの行いなど、どれでも構いません。『ブレイキング・バッド』のパイロット版では、ウォルター・ホワイトは覚醒剤を作り始める前に、職場で屈辱を受け、がんと診断され、家族を養えるかを案じています。だから観客は彼の選択についていくのです。

欠点には代償を払わせましょう。身勝手さが誰も傷つけないアンチヒーローは、ただ機嫌の悪い英雄にすぎません。選択が人間関係を壊し、選択肢を狭め、あとで返ってくる結果を生むようにします。物語が欠点の代償を払わせて初めて、観客はその人物の欠点を信じます。

変わるかどうかを決めましょう。『カサブランカ』で最後にイルザを手放し戦いに加わるリック・ブレインのように、英雄へと近づくアンチヒーローもいます。ウォルター・ホワイトのように悪へと滑り落ちる者もいます。周りの世界が変わるなか、自分は変わらない者もいます。どれも成り立つ弧ですが、選択は意図的に行い、結末の形を決めるものにしましょう。

よくある質問

アンチヒーローとは何ですか?

勇気や道徳心、理想といった伝統的な英雄の資質を欠く主人公です。それでも物語は彼らを追い、観客は欠点にもかかわらず、あるいは欠点ゆえに、その行く末に関心を持ち続けます。

アンチヒーローと悪役の違いは何ですか?

アンチヒーローは物語が追う人物、つまり主人公です。悪役はたいてい主人公に立ちはだかります。物語によってはアンチヒーローが悪役より道徳的にひどいこともありますが、物語の中心にいることが彼らをアンチヒーローにしています。

アンチヒーローの例を教えてください。

よく知られた例に、『タクシードライバー』のトラヴィス・ビックル、『ブレイキング・バッド』のウォルター・ホワイト、『ザ・ソプラノズ』のトニー・ソプラノ、『マッドメン』のドン・ドレイパー、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ、デッドプール、最初の『スター・ウォーズ』のハン・ソロがいます。

バットマンはアンチヒーローですか?

バットマンは普通は英雄と見なされますが、法の外で動き、恐怖と暴力を使い、しばしば単独で行動するため、アンチヒーローとして描く版もあります。『ダークナイト』のような暗い解釈ほど、アンチヒーロー寄りになります。

なぜ観客はアンチヒーローを好むのですか?

アンチヒーローは古典的な英雄より複雑で予測しにくいことが多いからです。欠点には身に覚えがあり、有能さや機知は楽しく、正しいことをするのかという問いがすべてのシーンに緊張を生みます。

アンチヒーローにもキャラクター・アークはありますか?

あります。『カサブランカ』のリック・ブレインのように英雄へと成長することも、『ブレイキング・バッド』のウォルター・ホワイトのようにさらに堕ちていくこともあります。物語が周囲の人々を試すあいだ、ほとんど変わらないアンチヒーローもいます。